水戸勝田支部 『元気会』報告 (令和3年12月度)

令和3年度12月期の元気会の講義報告です。今期は 「微生物の種類とその働き」( 講師:渡部 浩 )、 「がん治療の賢い選択 」( 講師:吉田 一廣 )の2件の講義がありました。

微生物の種類とその働き

開催日:2021年12月9日
講師:渡部 浩(昭41学金)

1.微生物の種類

微生物の種類には「細菌類、酵母類、糸状菌類(カビ類)、藻菌類等」があり、その酵母類が有機物または無機物に作用して、メタンやアルコール、有機酸のような有機化合物を生じたり、炭酸ガスや水素、アンモニア、硫化水素のような無機化合物を生じ、なおかつその現象が人類にとって有益となるような現象を広義の発酵としている。

例えば、地表での動植物の遺体の分解という浄化だけを重要な役割としているだけでなく、生物の分解によって生じたカリウムやアンモニウム、リン等無機成分や分解発行の際に生成される微生物自体の菌体成分等、植物に貴重な栄養素として供給される。

2.地球上における生命の起源

(1)   生化学者オパーリンの説

ソ連の生化学者オパーリンによると、原始地球環境下でまず、アンモニア、シアン化水素、リン、二酸化炭素等の無機質とメタン、アセチレンといった有機質が混合し、この混合気体に紫外線や電磁波などの光、さらに火山のマグマ熱といった物理的条件が加わってまずアミノ酸、糖、塩基など生体構成に不可欠の物質が自然に合成された。次にこれらの物質がさらに反応を重ねることにより、まず細胞様構造が生じ、また別に生じていた代謝活性を持ったタンパク質様物質およびその合成を助ける核酸がうまく組み合わさって生命の起源が誕生したという「化学進化説」である。

こうして地球上に誕生した最初の生命は、原生生物(微生物)としてそのままの形でとどまり今日を迎えたものや「生物進化」を繰り返しながら成長を続けてついには、さまざまな植物や動物にまで発展し今の世を迎えたもの等まさに神秘的である。

(2)生命の歴史
生命の歴史
  • 35億年前
    地球上のどこかのたった一点に目にも見えない生命の根源が誕生
  • 6億年前
    無脊椎動物の誕生
  • 5億~3億5千万年前
    シダやさまざまな植物を出現させる森が生まれる
  • 2億年前
    恐竜が生まれる
  • 1憶5千万年前
    哺乳類が生まれる
  • 7000万年前
    霊長類が登場
  • 3500万年前
    原始的なサルが登場
  • 200万年前
    火を使った雲南元諜原人登場
  • 50万年前
    北京原人登場

3.地球上の微生物の分布

(1)土壌中の微生物の数

耕地土壌表面層中の微生物の数(6月の肥沃畑の試料)

 微生物群  土壌乾量1gr当たりの数 
 細菌類  3億~4億 
 酵母類 2000万~5000万
 放射菌類 20万~150万
 糸状菌類 3万~10万
 藻類 1万~10万
 原生動物 5000~1万
(2)河川の微生物の数

水源地の清澄な水1ml中      15個

水源地から2㎞下流地点      8万個

水源地から50㎞下流地点     68万個

水源地から160㎞下流(河口付近) 196万個

(3)大気中の微生物の数

大気中では、梅雨時期の湿度の高い環境下では、人間一人当たり数千個から数万個の微生物が漂っていると考えられる。

(4)対流圏や成層圏の境界

上空10㎞付近でも微生物が浮遊していることが知られている。

(5)南極や北極

南極大陸の不凍湖の零下18℃~零下23℃の池の中に多数の好低温菌が発見されている。これらの菌体の最外装に細胞を覆うゴム質のような厚い多糖類を形成したりして細胞内を保護している。

(6)高温環境下

砂漠のような乾燥した灼熱の土壌や温泉の熱源からも細菌や酵母が幾種類も分離されている。75℃以上を生育温度とする細菌でアメリカのイエローストーンの温泉から分離された菌は、高温のみならず、硫黄を好む変わり種であった。

また、水の沸騰点以上で105℃にも耐えた菌が、イタリアナポリ近郊の海底火山から分離されたものもある。海底火山では、熱水鉱床といって地殻からマグマが流れ出してきて、数百度にもなっており、その周辺の水は沸騰しており、更に0.1モルの硫酸が含まれていて、強い酸性と気圧が高い環境でも生育する菌が存在する。

(7)高圧環境下

深海は高圧下の状況に加えて低温であり、生育環境は大変厳しいが、ここにも低温好気圧微生物の世界が広がっている。100気圧、3℃でも生育環境が整い、徐々に増殖を開始することが分かっている。

(8)高塩分環境下

ヨルダン近郊の死海は、海水の約7倍にあたる25%の塩分が含まれており、舐めてみると舌が麻痺するほど苦くて塩辛いが、ここにも耐塩性の微生物が生育している。

4.土壌中における動植物の分解作用

地表上での動植物による有機物の総生産量は、年間5000億トンから1兆トンと推定されるている。もしここに微生物の発酵作用がなかったならば、地球上はたちまち動物や植物の遺体で埋まってしまうことだろう。

(1)       生物遺体の分解によって生じたカリウムやアンモニア、リン等の無機成分やその分解発酵の際に生成される微生物の菌体成分などは、植物に貴重な栄養素として供給される。植物はこれを栄養素として生長し、そこで光合成を行って二酸化炭素を固定し、大気中に新鮮な酸素を放出し、酸素呼吸を行なう生物に生きるための不可欠の糧を供給する。その草木は、草食動物の餌となり、これを食べて育った動物はさらに強い動物の餌食となる。それらの動物も最後は微生物の栄養素となって土を肥やすことになる。以下、生物地球科学的環境にかかわる微生物の発酵について述べる。

(2)       動植物が死滅すると空気中に浮遊していた微生物や土壌表面などにいた微生物が直ちにその遺体に群がって、増殖を開始し、分解発酵が始まる。動物遺体の場合、その主要成分であるタンパク質は、それを分解するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)によって分解されアミノ酸になる。また脂肪は脂肪分解酵素(リパーゼ)によって分解され、脂肪酸とグリセリンになる。一方、植物体の主要成分である炭水化物の一種、繊維素は、これを分解する繊維素分解酵素(セルラーゼ)によって分解されブドウ糖になる。

こうして生成されたアミノ酸や脂肪酸、グリセリン、ブドウ糖などは、微生物たちが直ちにこれを菌体内に取り込んで、さまざまな代謝系に利用し、最終的には有機物の骨格を作っていた炭素を二酸化炭素に変えて自然界に放出する。

 自然界の有機物は、その乾燥質量の約50%が炭素であるから、炭素の循環はエネルギーの流れと密接に連絡していることになる。

 ここに放出された二酸化炭素は再び植物の光合成(炭酸同化作用)に消費され、植物を育むと同時に大気中に大量の酸素を放出させる循環に寄与することになる。

 もし自然界にこれらの微生物の分解発酵の作用がなかったならば、大気中の炭酸ガス含量は数年でなくなってしまい、そのために植物は滅亡し、同時に動物や人間も酸素の供給が閉ざされて、同じ運命をたどることになる。

 一方、アミノ酸のような窒素化合物に由来した窒素成分も微生物の分解作用を受けて自然界で再利用されている。

 窒素成分の含有量は植物体の重量で1~15%、動物体で20~30%にも及ぶから、微生物による窒素の変換も自然界においては極めて重要なことである。

 窒素化合物の分解発酵によって作り出された窒素ガスやアンモニアの一部は、微生物の菌体外に放出されるが、大部分のアンモニアや硝酸態およびアミノ態化合物は土壌にそのまま還元され、高等植物の窒素供給源として極めて大きな役割を担っている。

 土壌微生物が多量に生息している土を特に「日沃土」というのもこのためである。

 地球上のすべての植物を緑豊かに繁らすためには、これまで述べた生物遺体の分解発酵によって生じる窒素化合物だけでは到底まかないきれないことになる。そこで再び重要な役割を担うのもまた微生物の発酵で、これは大気中の窒素ガスをアンモニアに変える窒素固定菌と呼ばれる特殊な微生物の役割となる。

(参考文献:「発酵」小泉武夫著 中央公論新社)

がん治療の賢い選択

開催日:2021年12月9日
講師:吉田 一廣(昭34学機)

★   がん治療について

 インターネットなどで治療の成功体験談などを眼にすると、がん患者はその効果を期待してしまうかもしれない。だが、標準治療以外は科学的に効果が確認されていない治療が多く、慎重に検討するようにと専門家は呼びかける。

★   専門医勝俣教授(日医大)の対応例

日本医大腫瘍内科の勝俣範之教授はある時、治療中の卵巣がんの50代女性から「免疫細胞療法を受けたい」と打ち明けられたという。

この療法は、免疫細胞を培養・増強して体内に戻し、がんに対する免疫力の攻撃力強化を狙ったもの。だが、科学的に効果が確認されたとまでは言えず、公的医療保険が適用されない自由診療のままだ。勝俣教授は「自由診療に使う200万円があれば、世界一周旅行にも行ける」と説得したという。

女性は世界一周旅行が夢で、標準医療である抗がん剤治療を選んだ。薬で進行を遅らせ、治療の合間に3回世界一周旅行を愉しんだ。がんの発見から6~7年後に亡くなったが、勝俣教授は「自由診療を選んでいたら、半年も生きられただろうか」と振り返る。

★   不透明な「効果」

標準治療から外れ、公的保険が適用されない未承認の治療に代替療法がある。日本緩和学会によると、健康食品やヨガなどに加え、クリニックで行なわれるビタミンC療法や免疫細胞療法も含まれる。

倦怠感の緩和など生活の質(QOL)の改善が確認されたとしているが、延命効果が明確に証明され公的保険の適用を受けたものは無い。

代替療法を紹介するウエブサイトには、患者にとって魅力的な説明が並んでいる。だが、成功体験談は偶然だったり、別の要因が関係していたりする可能性がある。「宣告された余命を超えられた」などという文言があっても、医師が示す余命は平均値で、個人差もあり、それ自体は何も特別なことではない。

★   先進医療にも難点

未承認の治療には、標準治療を目指して臨床研究を進める「先進医療」と、製薬企業などが主導する「治験」もある。規模が大きくて有名な医療機関や企業が手掛けることが多い。だが、厚生労働省によると、先進医療はがん治療以外も含め、効果が確認されて公的保険が適用されたのは約60%に留まる。

治療に参加すれば、「未来の新治療」を先取りできるかもしれないが、新薬と既存薬のグループに無作為に分けられるため、患者が望んでも新薬治療が受けられない可能性がある。

がん治療に詳しい島根大学病院臨床研究センター長の大野教授によれば、標準治療といえども、「効果があるのは7~8割の患者」と医師に言われると、逆に「2~3割は効果がない」と受け止め、代替療法の魅力的な文言に心惹かれてしまうかもしれないという。

そこで、

  1. 健康被害がある
  2. 経済的な負担がある
  3. 西洋医学に基づく標準治療を否定している

の3点を挙げ「これらに当てはまる代替療法は有害な場合もあり、避けたほうが良い」と注意を呼び掛けている。

(出展: 毎日紙(2021.6.16)より)

※日本医大の勝俣教授らが2016年6月に行った調査より。インターネット検索で上位に出たがん治療関連の247サイトについて専門家分析した。

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