水戸勝田支部 『元気会』報告 (令和4年7月度)

2022年7月14日
元気会幹事 天野慶次郎(昭56学機)

今年度最初の元気会(自己啓発・グループ勉強会)を開催しましたので、以下に講義内容を紹介します。今回の講義は、吉田 一廣氏(昭34機)と私、天野が担当しました。

中国の宇宙進出 -高まる衛星攻撃の脅威-

開催日:2022年7月13日
講師:吉田 一廣(昭34学機)

宇宙が戦闘に初めて本格的に活用されたのが、91年の湾岸戦争のときだった。米軍の精密兵器データーリンクによる情報共有、戦闘機が敵のレーダーに捕捉されにくくするステレス性能が戦争を変えたとされる。精密誘導兵器を変えたのがOPS(全地球測位システム)。その衛星技術は地図に頼れない場所での兵士の迅速な展開や通信手段の確保につながり、イラク戦争(03年)では進化と深化を遂げた。

自衛隊は90年代以降、通信や測位などで衛星利用を本格化させた。弾道ミサイル防衛でも様々な衛星アセット(装備)でデータの送受信を行っている。災害派遣活動でも役立っている。

航空機が戦場に登場した当初は主に偵察に使われ、航空機同士の戦いは発生しなかった。現在の宇宙利用はその段階に近い。その後、航空機同士の戦いや航空管制レーダーへの妨害が始まる。宇宙の安定的な利用に対するリスクがまさに高まっている。中国による衛星破壊実験(07年)で、衛星そのものが攻撃対象になりうることが現実になった。中国やロシアは対衛星兵器として、衛星を打ち落とすミサイルや、捕獲・破壊する「キラー衛星」、レーザー照射で衛星センサーを麻痺させるような「指向性エネルギー兵器」も開発しているとみられる。

ターゲットは衛星に限らない。イラク戦争ではOPS利用も阻もうとイラク軍が電波妨害を行ったが、今後常態化するだろう。また衛星は、主に地上設備からのコマンド(信号)制御されている。

昨年(21年)5月にハッカー集団のサイバー攻撃が、米国の石油パイプラインを操業停止に追い込んだ。衛星を持たない国や非国家主体が同じ手法で衛星を乗っ取ったり落下させたりすることも懸念される。

宇宙ゴミ(デブリ)の脅威が顕在化している。打ち上げロケットなどの残骸が数多く漂っている。25年前にフランスの軍事衛星とデブリが衝突したのだが、初めて確認された人工物同士の衝突とされる。幸いに衛星の機能には支障がなかったとのこと。中国の衛星破壊実験によってもデブリは急増した。衛星などが放置されることでもデブリとなるので、衝突により指数関数的にデブリが増えていく恐れがある。

航空自衛隊は20年5月、「宇宙咋戦隊」を新編した。衛星の衝突回避や、妨害を監視するには、高精度で衛星位置を把握したり、情報を短時間で分析したりする能力の取得と向上が課題だ。カウンターパートの米宇宙軍のジョン・レイモンド大将は「国家間の協力は単にあればいいものではなく必須」としている。宇宙開発や利用で、はるか先を行く米国との間でも、日本の強みを生かせば協力できる分野は少なくない。

空自の宇宙分野での取り組みは当面、衛星が中心になるだろう。地上設備や通信リンクのシステム全体を守る確かなビジョンを描き、防衛力の整備を進める過程で力と実績が認められ、「航空宇宙自衛隊」と呼ばれる組織が早く登場できることが嘱望される。 

※典拠: 21年7月7日付毎日紙

漢詩を読む

開催日:2022年7月13日
講師:天野慶次郎(昭56学機)

◆  はじめに

漢詩は本来は繁体字を用いた縦書きですが、ここでは、現在の中国に倣い、簡体字を用いて横書きで表記します。併せてピンインも表記しました。

漢文(漢代の文章)は中国人でも難しく、意味を正しく理解できないそうです。しかし、漢詩(唐詩)は小学校で習い、300首を暗記するそうです。

漢詩は唐の時代(618年~907年)に最も栄え、唐代に作られた詩を唐詩といます。

漢代で素晴らしいのは文章・唐代で素晴らしいのは詩・宋代で素晴らしいのは詞・元代で素晴らしいのは戯曲という意味で「漢文・唐詩・宋詞・元曲」と言われます。

   以下に代表的な五言絶句を三首紹介します。

1.   『相思』(そうし)xiāng sī     王維(おうい)wáng wéi(701年~761年)

红豆生南国            紅豆南国に生ず
Hóngdòu shēng nánguó
春来发几枝          春来りて幾枝か発(ひら)く
chūn lái fā jīzhī
愿君多采撷          願わくは君多く採撷(さいけつ)せよ
yuàn jūn duō cǎi xié
此物最相思          この物最も相思はす
cǐ wù zuì xiāng sī

<簡体字と繁体字の比較>
红―紅 国―國 来―來 发―發 几―幾 愿―願 采―採

<現代語訳>
紅豆は南の故国に生じる
春が来ればいくつもの枝に実を付けるだろう
出来れば君に沢山摘んでほしい
これは相思の豆で、最もよく別離の心を慰めてくれるのだから

<参考>
紅豆は別名「相思子」ともいう江南地区に生息する紅色鮮やかな実をつける植物です。唐小豆または海紅豆とも言いますが、小豆とは全くの別物で、常緑樹の種子です。

2.『静夜思』(せいやし)jìng yè sī    李白(りはく) lǐ bái(701年~762年)

床前看月光         床前(しょうぜん)月光を看る
chuáng qián kàn yuè guāng
疑是地上霜         疑うらくは是れ地上の霜かと
yí shì dì shàng shuāng
举头望山月         首(こうべ)を挙げて山月を望み
jǔ tóu wàng shān yuè
低头思故乡         首を低(たれて)故郷を思う
dī tóu sī gù xiāng

<簡体字と繁体字の比較>
床―牀 举―擧 头―頭 乡―郷

<現代語訳>
寝台の前で月の光を見る
まるで地面に降りた霜のようだ
頭を挙げて山の上の月をみていると
だんだん頭が垂れてきて、気が付くと故郷のことをしみじみと思っていた

3.『春晓』(しゅんぎょう)chūn xiǎo   孟浩然(もうこうねん)mèng hào rán(689年~740年)

春眠不觉晓         春眠 暁を覚えず
chūn mián bù jué xiǎo
处处闻啼鸟         処処啼鳥を聞く
chǔ chǔ wén tí niǎo
夜来风雨声         夜来風雨の声
yè lái fēng yǔ shēng
花落知多少         花落つること知りぬ多少ぞ
huā luò zhī duō shaǒ

<簡体字と繁体字の比較>
觉―覺,晓―曉,处―處,―鳥,来―來,声―聲

<現代語訳>
春の眠りは心地がよく、夜が明けるのも気づかない
あちらこちらから鳥のさえずりが聞こえる
昨夜は風雨の音がしていた
さぞたくさんの花が散ったことでしょう

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