舛井 正義(昭37学電)
最近、世の移り変わりの速いことに驚くのは年のせいだろうか。
国境を越えてヒト、モノ、カネ、情報が大量に高速で行き交うグローバル化の時代が到来した。今、人工知能(AI)、IoT、5Gがそれを一層加速すると予想されている。先進国の製造業は安い労働力を求めて、新興国に工場の移転を続けている。アメリカのラストベルト地帯はかつて鉄鋼業や自動車産業が栄えていた地域であるが、国際競争の激化によって衰退し、多くの労働者が職を失い、不満が高まった。一方、アジアの新興国中国、インド、インドネシア、タイでは労働者は職を得て、賃金が上昇し、高所得者や中間層が生まれている。
30年前まではのどかな漁村であった中国広東省深圳市の今は、経済特区としてハイテク産業が集中している。新しい産業も続々と生まれていて、活気に満ちている。
グローバル化が進むにつれて、海外に移り住んで仕事をする人が増えている。国連の調査によると2015年2億4,000万人の労働者が移動したという。そのうち、7,508万人がアジアへ移住し、北米へは5,448万人が移住した。10年前に比べて、アジアへの移住は40%増加し、ヨーロッパへの移住の18%増加を引き離す。20世紀はアジアから欧米を目指し、21世紀は欧米からアジアを目指して移動している。経済成長が見込まれる東南アジアにはインフラ整備、資金、法律の制定等まだまだ足りないものが多いが、外国企業のビジネスや労働力を受け入れることで自国の経済成長につなげている。
日本でも平成31年4月から外国人の受け入れが大きく変わる。人手不足とはいえ、今までにない社会変化が生まれるだろう。ただ外国人労働者の大量流入により、あつれきも生じる。欧米では不満が高まっているが、日本では、欧米の外国人受け入れ先行国の経験を学び、排他的にならず、共生の道を探ることができるだろうか。国ばかりでなく、一人ひとりの共生への努力が何よりも大切であるように思われる。
1980年以降に生まれた若者をミレニアル世代(M世代)と呼ぶそうだ。ミレニアル世代はインターネットやスマートフォンが当たり前の環境に育ち、インターネット全盛の消費では主役となった。
今の60歳代は経済発展を優先するのに対し、40~50歳代は1997年の経済危機を体験したため、安定志向が強いという。一方、豊かに育ったミレニアル世代は、政治的関心は低く、権力への服従意識が薄いが、インターネットを通じて瞬く間に連携して世論を形成すると言われている。主張が強く、移り気なミレニアル世代をどうとらえてゆくのか? 社会の矛盾を鋭く突き経済成長一点張りの世代にはミレニアル世代の考えが理解し難い。限られた時間の中で、世代間格差の解消のため、相互にどのようなことをなすべきであろうか。同窓会を通じて、少しでも各自が手掛かりをつかめれば幸いに思う。
平成16年4月国立大学が独立行政法人化され、各大学が個性を出して力を発揮することが求められた。しかし、大学を運営する基礎的経費である「運営交付金」は毎年1%減額し配分されつづけている。大学関係者は運営交付金の増額を強く要望しているがまだ一向に改善されていない。その一方で、競争的研究予算が大幅に増額された。その結果、予算獲得のため、しのぎを削ることになった。
競争的研究予算である科学研究費の採択率は25%だそうである。申請者4人のうち、3人は不採択である。政府の主導する研究分野でないと採用されないようだ。民間企業との共同研究も短期的成果を求められるので容易ではない。若手の教官は「安住を防止するため」任期つき採用である。成果を上げなければ「再任」されない。博士後期課程を修了しても、すぐには安定した職を得られない。それは、日本では、研究者の流動性はまだ低いからである。博士後期課程を目指す学生が減少傾向にあるのはこのような事情から推察できる。これで良いとも思わない。むしろ残念である。大学は若人の成長を促す場でもある。成長を促すには資金も、サポートスタッフも重要である。しかし、最近改善されたという話を聞かない。卒業生のご理解とご支援を切望致します。
本文の一部に日本経済新聞、茨城新聞の記事を引用させていただきました。ありがとうございました。