相場 裕玲(平7学シ)

【はじめに】
はじめまして。2023年度に入会させていただきました相場裕玲といいます。よろしくお願いいたします。現在59歳で地元のクリニックで診療放射線技師として勤務しております。皆様も病院に行きますと、CT・MRI・骨密度検査・超音波検査等いろいろな画像診断検査を経験なされた方もいると思います。それらは主に診療放射線技師が担当しております。
MRI・超音波に関しましては放射線を発生いたしませんので他の医療職(例えば、臨床検査技師)が担当している施設もあります。工学部出身で医療職勤務は少ないと思いますので、今回は画像診断について書かせて頂こうと思います。
【CTとMRIの違い】
よくCTとMRIはどう違うのかと聞かれます。どちらも大きな筒の様な所に入って、「CTは検査中、寝台が動き検査時間は短い」、「MRIは検査中動かないけど、大きな音がして検査時間は長い」等の違いがあります。CTはコンピューター断層装置と言いまして、人体にX線を螺旋状に照射してゆき、人体を通過した時のX線の減弱をコンピューターで解析して2Dまたは3Dの画像を作成してゆきます。MRIは磁気共鳴画像と言いまして患者さんに大きな磁場の中に入ってもらい、その状態である周波数のラジオ波を照射すると、体内の水を構成する水素の原子核(プロトンと言います)が共鳴現象を起こす事を利用して画像化するものです。ですから放射線を照射するわけではありません。一般的にCTは胸部・腹部・心臓といった動きの大きい部位の検査に有用で、MRIは脊椎や関節といった部位の診断に優れています。医師は患者さんの症状と検査のもつ特性を加味しながら画像検査をオーダーしてゆくのです。
【脳梗塞画像診断】
画像診断がその特性を生かし、治療してゆく中でその有用性を発揮してゆく対象の疾患に‘脳梗塞’が挙げられます。脳梗塞は頭の中の血管に狭窄や閉塞が生じ、その先に血液が届かない事によって細胞が壊死してゆく疾患です。主な症状としては、片方の手足の動きが悪くなったり、感覚が鈍ったり、呂律が回らないといった事が挙げられます。これらの症状がある患者さんが救急搬送されてきた場合、画像診断の分野としましては、第一にCTを施行します。そこで頭の中の出血の有無を確認します。出血が無いとなると、脳梗塞の確認の為に、MRIを施行します。(施行しないで治療を開始する場合もあります。)MRI検査ではいくつかのパターンの画像を作成してゆきますが、特に拡散強調画像という画像が大事になってきます。(それだけだったら数分で終わります。)この画像は水分子の動きを如実に反映し、動きが緩慢になった個所(つまり梗塞部位)を高信号(白く)に描出してくれます。(図1)
血管が詰まると細胞に酸素やエネルギーが届かない事によって細胞内浮腫という細胞の水ぶくれを生じ水分子が自由に動けなくなります。その後血管原性浮腫へと移行してゆきます。この細胞内浮腫の段階は発症後3~4時間ぐらいで、その時点での異常状態を描出してくれるのは、今のところ拡散強調画像のみです。CT上はまだ変化が現れません。そして、その細胞内浮腫の段階で、それに適した治療を開始することによって多くの場合、後遺症を残さず社会復帰が可能になります。治療が遅れ血管源性浮腫の段階まで移行すると、言語障害や半身麻痺といった後遺症を残す事があります。ですから、自分や自分の周りで前述した様な脳梗塞を疑う症状が発症した場合には、速やかに対応してゆく事が予後を大きく左右する事をご理解くださればと思います。皆様が(そして自分も)健やかに日々の生活を送れることを願って・・・

図1 頭部MRI 拡散強調画像
(診療放射線技師国家試験より引用)