寄稿 時間の長さについて考えてみました(支部会報第45号より)

寄稿 時間の長さについて考えてみました

坂場 英太(昭55院精)

 先日、作家の川上弘美さんのエッセイを読んでいたら、次のような一文がありました。『昔、と書きかけて「昔って、どのくらいだろうか」と考え込みました』。これを読んで私も「昔の長さ」、つまり「時間の長さ」について考えてみました。

【時間の長さと年齢の関係】

私は1955年8月、敗戦から丁度10年後の生まれですが、この10年ってどのくらい昔なのでしょうか。10歳から15歳くらいの少年の頃に感じた10年が、現在の私と同じ10年ではないと思うのです。では10年前の出来事を、少年期は、現在の感覚でどのくらいの長さとして捉えていたのか。遥か昔の出来事と捉えていたように思うのですが、20年なのか、はたまた40年くらいなのか、気になりました。

 そこでこの時間感覚を説明してくれる説はないか探してみると、「ジャネーの法則」というのが有りました。時間の感じ方は個人差が大きく、数値化出来るようなものでは無いという批判もあり、かつ科学的根拠は無いようですが、数値化出来るという点が面白そうで、調べてみました。

 ジャネーの法則の定義は、「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)、Y(体感時間)=1/n(年齢)」と表されます。若いほど時間は長く感じられるということです。

        【体感時間】

15歳の1年  =  60歳の3か月
 (注)インターネットから画像借用

 15歳を基準に計算すると、15歳の感じる1年は、30歳では6か月、45歳では4か月、60歳では3か月に感じられるという結果です。

 言い方を変えれば、15歳の時は、現在より1年を4倍も長く感じていたことになり、10年前の出来事は、現在の感覚で40年くらい前の出来事として捉えていたということになります。確かに、この時間感覚、合っている、気がします。

 夏休みの時間感覚はどうでしょう。15歳の夏休み1か月半は4倍の6か月。長過ぎると言う気がします。年齢に関係なく、楽しいことは時間が短く感じられますから2倍の3か月かな、と。

【体感時間についての科学的研究】

更に、体感時間についての科学的研究はないか調べてみると、一川誠千葉大教授の研究レポートに、「年を取るほど“実際の時計”より“心の時計”の進み方が遅くなる」という記述がありました。一見、年を取ると時が経つのが早く感じるというジャネーの法則と逆のようにも思えます。

解説を見ると、「3分と感じた時点でボタンを押す実験をしたところ、年齢が高くなるほど、実際の3分より長くなる傾向があった。つまり“実際の時計”より“心の時計”の方が遅くなる。要因としては、代謝が関係しているという説が有力」、とあります。極端な言い方をすると、「自分では半日と思ったのに一日経っていた。それで、時間が経つのは早いと感じる。要因は加齢だ」。

この例えなら、年を取って時間が経つのが早く感じることと、心の時計が遅くなることは、同じことなのだと何となく理解できます。

【おしまいに】

少し脱線しますが、「龍宮城で乙姫様と時間を忘れて楽しく過ごし、帰って来たら龍宮城で感じた時間より遥かに長い時間が経っていた」という「浦島太郎」のお話は“心の時計”と“実際の時計”の進み方は違うということを説いている、と思ったのですが、突飛な解釈でしょうか。

さて、最後に感想ですが、一川教授の説は科学的ですが、まだ研究半ばという印象です。でも“ジャネーの法則”の時間感覚、科学的根拠はさておき、私には“腑に落ちる”結果でした。

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